ブルーオーシャンの見つけ方 Blue Ocean

ブルーオーシャンとは、競合相手のない未開拓市場のこと。
社会と経済の潮流はどこに向かうのか。
未来を築くインフラのあり方とは。
サーファーの顔も持つ川原秀仁が、業界業種を超えて縦横無尽に語るインタビュです。

オープン・ソースの活用法、ビジネスで使える「先読み力」のつけ方

第5回国交省情報だけではダメ、周辺にも建設ビジネスのタネがある

誰でもアクセスできる一般公開情報を取得し、そしてOSINT(分析)の習慣がつけば、私たちは世の中を詳しく理解できるだけでなく新たなビジネスモデルの探索も可能になります。なぜなら新ビジネスモデルが生まれるプロセスにはパターンがあり、そこではOSINTが重要な役割を担っているからです。

ビジネスモデル探索のプロセスを図に示すと以下のようになります。

新ビジネスモデルが胎動する(芽吹く)前には必ず予兆があります。

予兆1つ目は、その分野におけるビジネス停滞の課題が見えてくることです。2つ目は他領域・他分野での先進ビジネスモデルの誕生です。3つ目が、それらを支えるDXテクノロジーがブレークスルーする機運です。この3つが合わさって世の中のニーズにピタッとはまる形が提示されると、いよいよ新ビジネスモデルが動き出します。ただし世間はこの胎動にまだ気づいていません。

一足または二足早くこの動きをキャッチするために不可欠なのが、先行トレンドのチェックとOSINTによる分析です。先行トレンドはオピニオン・リーダーの先行発信によっても認知できます。SNSや日々のニュースで皆さんも頻繁にチェックしているかもしれません。

OSINTは、前回までに紹介した官公庁サイトの政策資料、白書、一般統計などを基本とします。予兆から「新ビジネスモデルの胎動」を推理した上でOSINTによって考え、その胎動が成長する可能性はあるか、どんな分野に影響が出るかを予測します。

仮にここで新しい動きを見逃してしまっても、実はもう一度チャンスがあります。それは「法制度改正」のタイミングです。

官が気づくと法制度が変わり、世の中が変わる

官公庁は新ビジネスモデルの動きに敏感です。新しいビジネスが胎動期を抜けて誕生すると、それを国にとって有効活用しようと法制度改正に取りかかります。その際は比較的大きなニュースとして報道されて私たちも気づきやすくなっています。

これら法制度施行後の定着までには必ず2〜3年のタイムラグが生まれるので、このときに私たちも新ビジネスモデルへのチャレンジを始めることが可能です。皆さんが知っている例で挙げるなら「働き方改革」「インボイス制度」などが該当します。国は数年前から法整備を進めて公開し、耳の早いビジネスパーソンは新しいマーケットを感じ取って行動していました。

制度を見越したIT・DXツールの開発、施行によって業務に変更が出る人たちへ向けた新サービスの構築など、新しいビジネスを創って今まさに展開しているところです。

落ちているニュースを拾うだけでは遅れてしまいます。自らニュースを見つけに行き、定期的に観測していると変化が分かってきます。読み続けていると、オピニオン・リーダーの発信を見て「これはあのことかもしれない」と予兆に気づけるようになるのです。

少し前からの動きなら「インバウンド政策」をチェック

建設業界にいる皆さんは、建築基準や規制に関するニュースにはとても敏感で、国交省周辺の動きには詳しいでしょう。しかし世の中を「先読み」するのであれば、もっと広い領域までアンテナを張り巡らせる必要があります。

例を挙げるなら観光庁による「観光立国推進基本計画」、いわゆるインバウンド関連の新施策がそうです。調べると分かるのですが、訪日外国人観光客について2025年度に向けた目標を立て、受け入れ地域や体制作り、観光客1人当たりの消費額などが設定されています。

観光立国推進基本計画 | 観光立国推進基本法 | 観光庁について | 観光庁
https://www.mlit.go.jp/kankocho/kankorikkoku/kihonkeikaku.html

インバウンド医療なども今後は大きなビジネスモデルになります。先日も羽田空港に隣接した高額医療施設の開業がニュースになりましたが、それはこの流れ(高付加価値なインバウンドの誘致)の1つです。もちろんこれも施設建設のプロジェクトが数年前から始まっていたはずです。

また、政府政策をマクロとすれば、人々の動きはミクロです。SNSに目を転じると訪日外国人の皆さんが日本のどこを評価しているかも分かります。私から見ると、現在は日本文化の中でも「安価で美味しい食べ物」が大きな武器になっていると感じます。

これらの要素を掛け合わせ、訪日外国人の皆さんに日本の暮らしやすさや安全性をアピールしてもらえば、以前からお話ししている「対日直接投資促進戦略」のフィールドとも重ねて考えることもできます。OSINTのプロセスで得られた情報を使って、有機的に結びつけられる人がビジネスチャンスを作り出すことが可能なのです。

情報を活用すれば年齢や経験に関係なくこれからのビジネスのタネを探すことができます。むしろ若い感性を持った方々のほうが固定観念に囚われない発想をしやすいかもしれません。

今後数年間、建設業界にとって重要なのはBIM/CIM関連施策

建設業界で今後数年にわたって大きな影響を及ぼすと考えられるのが「BIMによる建築確認申請」の展開です。施策自体は国交省が主導していますが、関わる範囲は広大で、さまざまな業界からの働きかけが可能です。IT・DX分野のほか、施設運営、施工方法、その情報提供プロセス構築などで激しい変革が予想されます。

ということは、私たちにとっても大きなビジネスチャンスと言えるわけです。次回はこの「BIMによる建築確認申請」実施に焦点を当てて、建設業界として何を実践すればよいかを解説します。

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