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ブルーオーシャンとは、競合相手のない未開拓市場のこと。
社会と経済の潮流はどこに向かうのか。
未来を築くインフラのあり方とは。
サーファーの顔も持つ川原秀仁が、業界業種を超えて縦横無尽に語るインタビュです。

建設業界から変えられる、企業不動産(CRE)と公的不動産(PRE)のポートフォリオ

第4回公共のPRE戦略、民間と同じ構図で施設有効利用が可能に

前回は、民間企業の製造業をモデルに企業不動産(CRE)を考え、「ROA(Return On Assets:総資産利益率)」という指標を紹介しました。今回は「ROA」をいかに公的不動産(PRE)へ応用できるかを見ていきましょう。

CREである製造業モデルに出てきた所有施設は、本社・研究開発施設・人財育成施設・生産施設・販売施設・支社などでした。PREの不動産ポートフォリオはガラッと様変わりします。

公的不動産(PRE)のポートフォリオ、約4割は公立学校

自治体が所有する施設には、庁舎・福祉施設・病院などの公衆衛生施設・公立学校・公民館や図書館などの社会教育施設・公営住宅などがあります。そのうち都道府県や政令指定都市、市町村など多くの自治体のポートフォリオの約4割を占めているのが公立学校です。

製造業モデルと同じように、PRE戦略についても施設を見て「プロフィット・センター」と「コスト・センター」に振り分けてみます。欠かせない施設はプロフィットとして活用し、無駄な施設はコストとしてカットする視点での見直しです。どうすれば「ROA」が向上するのかを考えるのです。

豪華な庁舎建設は、ひと昔前であれば地域のランドマークとなり、建設した首長にとっても名誉ある事業となっていました。しかし現在は人口減が進んだほか、コンビニやPCを活用したオンライン申請が広まって直接窓口へ行く住民の数が減っています。必ずしも以前のような庁舎が必要とはいえません。

また、図書館や体育館など点在していた施設は集約したほうが再建コストが安く、人が集まりやすくなるでしょう。自治体に不可欠な庁舎と統合するのも一つの手です。ポートフォリオの約4割を占める公立学校のあり方についても、全てを存続させようと考えるより、今後の人口を考えて数や建築方式を見直したほうがよいでしょう。そうすれば「ROA」に反映できます。

実は、このようにPREにおけるポートフォリオを見直す作業は、むしろ建設業界にいる私たちが積極的に働きかけ、ビジネスを創出すべき分野といえます。なぜならPREに関連する公共事業は、内閣府の「PPP/PFI推進アクションプラン」という施策ですでに重点化されているからです。

公的不動産(PRE)のポートフォリオ、約4割は公立学校

内閣府「PPP/PFI推進アクションプラン」の概要と応用

この内閣府「PPP/PFI推進アクションプラン」には令和4年改定版(2022年)と令和5年改定版(2023年)が存在します。どちらにも共通しているのは「公共施設運営において民間の知恵と資金を最大限活用すること」「その実現のために官民のパートナーシップを図る『PPP』、民間の資金活用を視野に入れた『PFI』を積極的に取り入れること」です。

令和5年改訂版では前年版に比べて重点実行期間が5年延び、目標事業件数が70件から575件へ大幅加増されました。つまり前年版より、全国にわたって一層の民間協力を求めるようにした、国としても強力なバックアップを決めたということです。これまで話してきたPRE戦略はまさに今、国の大きな施策の中に入っているのです。

「アクションプラン」を読み解くと、従来と今後では、国が推進したい発注傾向は大きく変わることが分かります。

これまでの公共直営の建設発注では、従来方式やDB方式・ECI方式を含む多様な発注方式が採用され、公共施設の主流をなす庁舎や学校の建設が進められてきました。しかし今後は、インフラ(水道・道路・発電など)施設・文化施設・公園・公営住宅なども範疇に入り、発注をPPP/PFI方式へ移行するように促しています。

シリーズ冒頭で紹介した働き方改革や「品確法」による効率化に加え、「アクションプラン」で多様な発注方式を柔軟に取り入れ、将来のPRE活用を変えていく。国はそういった大きな意思をもって動いています。私たち建設業界にいる人間もその社会変革に追随して、PREの世界を変えていくべきでしょう。

私たち建設業界にできるPREポートフォリオの改革

そのために強力な武器となるのが、やはり「ROA」を指標としたポートフォリオの見直しであり、今の自治体には困難な長期ビジョンを携えたPRE戦略の構築です。「アクションプラン」でも従来と比べて運営者の権限が増大し、事業期間も柔軟に拡充されました。PREにおいても複数年をかけて事業を育て、利益を得られるスキームが可能になったのです。

確かに公共事業の一環であるPREは民間事業ほどの収益は必要ないかもしれません。しかし、全てを税金だけで賄って施設運営を続けるのも現実的ではなくなってきました。人を集めて収入を得る施設造りはPREでもやっと考慮され、「アクションプラン」によって制度的にも整いました。この変化は私たちにとって見逃せないチャンスです。

次回は、人口減などの条件下でも可能なPRE戦略について考えます。

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