ブルーオーシャンの見つけ方 Blue Ocean

ブルーオーシャンとは、競合相手のない未開拓市場のこと。
社会と経済の潮流はどこに向かうのか。
未来を築くインフラのあり方とは。
サーファーの顔も持つ川原秀仁が、業界業種を超えて縦横無尽に語るインタビュです。

スポーツビジネスの事業構造を「公民連携」へ生かそう
ハコモノ施策から脱却できるPPPのバリエーション

第1回「ボールパーク」成功に続くスポーツビジネスの今

もう、スポーツ施設=「ハコモノ」建築ではない

近年、球場経営を軸としたボールパーク、他のスポーツビジネスを軸としたスタジアムやアリーナが全国で続々と建設されています。一部のメディアでは「造りすぎではないか?」と懸念する声もあるようです。しかしそれは、スポーツ施設を従来の「ハコモノ」同様と捉えた、大きな誤解ではないでしょうか。

現在の状況はまったく異なります。近年の施設は、特定スポーツのための「ハコモノ」ではありません。自治体と民間を結ぶ新たな経営手法で成果を生み、経済的なメリットのある地域振興の実現に取り組んでいます。外からの集客だけでなく、地域住民の皆さんとの共存も目指しています。

このスポーツビジネスの事業構造の組み立て方は、実は、自治体における他の公共施設の建築や運営にも応用できます。スポーツ施設と公共施設は一見無関係に見えるかもしれませんが、抱えている課題や構造には共通点があり、一方の解決策はもう一方の解決策につながっているのです。

今回は、スポーツビジネスが生み出した新しい経営手法に着目し、公共施設の建築や運営へどのように転用できるのか、具体策とともに紹介します。

日本のスポーツビジネス変革は、2015年に始まった

もともと日本には、国体開催を中心とした体育振興事業がありました。全国47都道府県に国体を開催できる体育館・競技場を行き渡らせることが目的で、「ハコモノ」の整備と普及をめざした時代だったいえます。しかし、2015年の「スポーツ庁」設立とともに、その方針が大きく変更されました。「スポーツの成長産業化」を旗印として、施設運営も視野に入れるようになったのです。

そのときスポーツ庁が掲げた目標は、「スポーツ市場の拡大」「その収益によるスポーツ環境の改善」「スポーツ参画人口の拡大」を生み出し、スポーツ市場規模5.5兆円を10年間で15兆円まで拡大することでした。そのため「単なるスポーツ施設」の建設だけでなく、商業施設や公共施設を併設した複合型のスタジアム・アリーナ整備に注力するようになりました。

これらは、2000年代の米国におけるスポーツビジネスの大発展、大成功に影響を受けた政策です。米国では2002年から2015年の間にスポーツGDPが2.4倍に成長、金額換算すると市場が23兆円から55兆円にまで伸びました。日本でもこの成功モデルを展開しようとしたのです。

日本のスポーツビジネス変革は、2015年に始まった

競技場だけでなく、街づくりまで巻き込んだ整備開発

日本でも、ボールパーク構想はすでに具現化しています。たとえば2023年開業の北海道ボールパークFビレッジは、新球場エスコンフィールドHOKKAIDOを軸としつつ、周囲は宿泊施設・商業施設・レストラン・マンション・シニアレジデンスなどを併設した「街」となりつつあります。2024年開業のエディオンピースウイング広島は、「365日のにぎわい作り」を目的に、スタジアムと商業施設を併設しました。

ブロスポーツの裾野も広がり、野球やサッカーのほか、男子バスケットボールのBリーグ、男女バレーのSVリーグ、卓球のTリーグ、ラグビーのジャパンラグビーリーグワンなどのプロリーグが相次いで誕生しています。中でもBリーグは大きく躍進し、2025年時点で上位4チームの売上規模はそれぞれ30億円以上に達しました。

上位チームの収益は、新たなスポーツ施設の開業を機に急伸しています。これらの施設は共通して、①商業施設併設による多機能性、②民間企業活用、③街なか立地という条件を満たしています。その結果、マネタイズの領域が広がり、街のにぎわいにつなげることに成功し、チームの増益を生み出したのです。

スポーツビジネスの成長曲線は、インバウンド黎明期と相似

ここ数年におけるプロリーグ創設による経営プレーヤーの増加、地域からの収益の伸びなどを見ると、急速拡大前のインバウンド観光の動向と非常によく似ています。インバンド施策である「ビジット・ジャパン・キャンペーン」は2003年の小泉内閣時代から始まりました。訪日外国人旅行客が初めて1000万人を超えたのは2013年です。その後の急成長は皆さんもご存じでしょう。実を結ぶまでは時間がかかりましたが、小さな変化が積み重なって限界点を迎え、爆発的に発展したビジネスとなりました。

私は、スポーツビジネスにも同じ予兆を感じます。インバウンド事業のように、今後の地域経済や日本経済を支える大きな柱に成長する事業になるでしょう。建設業界でもこの流れに乗り遅れないよう、戦略を立てなければいけません。

このシリーズでは以下の解説を進めていきます。

  • 第2回
    新しい事業手法の登場、公と民の負担バランスは多様化している
  • 第3回
    スポーツビジネスの事業構造は、公共施設に応用できる
  • 第4回
    税収だけに頼らない、収益化できる公共施設の造り方
  • 第5回
    新しい公民連携で、資産活用のPREから地域活性のDREへ
  • 第6回
    高市政権が示した「日本成長戦略」と私たちの選択肢
PAGE TOP