ブルーオーシャンの見つけ方 Blue Ocean

ブルーオーシャンとは、競合相手のない未開拓市場のこと。
社会と経済の潮流はどこに向かうのか。
未来を築くインフラのあり方とは。
サーファーの顔も持つ川原秀仁が、業界業種を超えて縦横無尽に語るインタビュです。

スポーツビジネスの事業構造を「公民連携」へ生かそう
ハコモノ施策から脱却できるPPPのバリエーション

第2回新しい事業手法の登場、公と民の負担バランスは多様化している

前回は、日本で展開されてきたスポーツビジネスの現在について紹介しました。これらの成功例の陰には「新しい事業手法」の選択があります。今回は、この事業手法の種類について詳しく解説します。

公民連携の手法選び、バリエーションが多様化した

ボールパークやスポーツビジネスが成長した要因には、公民連携における事業手法パターンの多様化があります。これまでの公共施設は直営や指定管理者制度を使ったPPPなどに偏っていました。しかし今は、多種多様な手法の中から「その事業に最も適した手法」を採用する方向に変わってきているのです。

公民連携で施設や地域開発を考える場合、さまざまな事業手法が選択肢となります。建設業界で考えられる「公共/民間事業手法の種類」を列挙してみます。

■公共/民間事業手法の種類
 ① 従来整備
 ② 従来整備→指定管理者制度
 ③ 従来整備→貸付方式
 ④ 従来整備→コンセッション
 ⑤ DB方式→指定管理者制度
 ⑥ BTO方式+指定管理者制度
 ⑦ BT+コンセッション
 ⑧ 負担付寄付+指定管理者制度
 ⑨ 負担付寄付+コンセッション(+貸付方式)
 ⑩ 民設民営

事業手法の種類は、「所有」「投資:施設整備(設計・施工)」「経営・運営」の各要素を公共/民間のどちらが負担するのか、その組み合わせによって決まります。ある土地において事業を行う場合、必ず土地所有者と施設所有者が存在します。その投資については、設計と工事の実行者のほか、資金調達の出し手のことも考えなければいけません。建設の運営では、維持管理者、運営者、更新投資者を定める必要があります。これらについて公共/民間のどちらが負担するか、役割を担うかによって、選択する事業手法は異なります。

「① 従来整備」は直営方式です。公共が土地と施設を所有し、投資も運営も公共が行っていました。また、投資については設計と建設のみが検討範囲であり、資金の出し手についてはそもそも考慮されていませんでした。

その後、公民連携の新しい事業手法として出てきたのが、施設運営も含めたPPP・PFIです。しかし当初は、民間企業が指定管理者制度で指名されたとしても、維持管理のみ・修繕のみの委託に留まるなど、制限された範囲の補助的な参画しか許容されていませんでした。近年は制度が改正され、民間でも参画できる範囲が広範になり、新しいビジネスが生まれる契機となっているのです。

PFI以外にも、分割負担の方法がある

いわゆるPFIは「⑥ BTO方式+指定管理者制度」「⑦ BT+コンセッション」が該当します。公共の所有物に対して民間が投資・運営を進める形式です。「⑧ 負担付寄付+指定管理者制度」「⑨ 負担付寄付+コンセッション(+貸付方式)」における「寄付」とは、民間が投資して設計・建設した施設を公共に寄付することです。寄付後の施設所有については公共に引き渡しますが、運営は民間が担当する契約になります。

施設の投資についても、分割負担という考え方が出てきました。近年はこの方法に注目し、「コンコースまでは公共負担、コンコースに接続する施設は民間負担」「スタジアムの土台となるスタンドは公共負担、ドームや開閉屋根は民間負担」など、負担を切り分けて検討する案件も増えています。実現まではまだ制度の整備が待たれるところですが、区分所有が可能になれば民間からの支援がさらに入りやすくなるでしょう。

公共と民間が、互いの長所を持ち寄って開発する

つまり、従来の「ハコモノ」とは比べものにならないほど、民間が「所有と投資と運営の総合的な面から事業を捉える」視点が広がり始めているのです。スポーツビジネスの事例を挙げるなら、千葉の幕張地区のスポーツビジネスは「⑨ 負担付寄付+コンセッション(+貸付方式)」を活用した事業手法が想定されています。民間の有力企業が施設の設計と施工を担当し、完成後は千葉市に寄付します。運営は民間企業が行っていくこととなっています。

この手法を採用すると、民間企業は固定資産税や保険料の負担をせずに、大きなプロジェクトへの投資と回収ができます。自治体は苦手な運営や収益確保の領域で民間のノウハウを活用でき、地域の活性化につなげられます。事業を細かく分割して考え、お互いの長所を生かせる方式です。これは単なるハードの建て直しではなく、経済構造の組み直しといえるでしょう。

公共と民間が、互いの長所を持ち寄って開発する

国体(国スポ)を開催した都市なら、スポーツビジネス振興は可能

すでにスポーツビジネスの世界では、スポーツと商業施設を複合的に統合した「アミューズメントエリア」を核とする段階に入っています。その実現に向け、公民連携の枠組みにおいても、多様な費用・役割分担の検討が可能となりました。また、以前は本業に付随するノンコア事業に限定されていた民間企業の参画範囲も、制度の拡充によって、今では事業の核となるコア事業まで手がけられるようになっています。

このビジネス構造は、国体(国スポ)開催を経験した都市であれば、地域発のスポーツビジネスとしてどこでも構築可能だと考えています。既存設備の見直し、商圏人口などを考えると、千葉や北海道と同規模の事業が1県1カ所以上で実現できると思うのです。

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