建築マネジメント塾 受講生インタビュー 2025年7月25日実施

発注・施工業務の環境変化で受講を決意
経営の視点から建築を見直し、興味と視野が広がった

株式会社東京ドーム
田中 邦弘さん

コロナ禍とインバウンド激増で、環境が大きく変わる

株式会社東京ドーム 田中 邦弘さん

私は受講した時期、当時の施設部という部署に所属し、工事発注について11年半ほど携わっていました。担当していたのは東京ドームグループ施設の新規開発、解体、補修整備の業務です。しかし2020年のコロナ禍でこれまでの環境が一変、同時期に経営母体が変わって、今度はコロナ禍明けをターゲットに東京ドームシティ全体で大規模リニューアルを展開することになりました。

何もできなかった無力感の後に急激に忙しくなったのが2022年頃です。ちょうどその時期に設計・施工の発注手法が変更され、材料費高騰などで見通しも異なり、今までのやり方が全く通用しませんでした。自分では「できていたつもり」でも何か感覚がズレてしまっている。これは個人として何か新しく知見をインプットしなければ、という危機感から新しい勉強を始めました。

著書『施設参謀』から知ったPM/CMの重要性

最初はまずeco検定の資格を取得し、この知識を生かそうとして出合ったのが川原先生の著書『施設参謀』(※1)です。ここで初めて「建築のプロジェクトマネジメント」という仕事の存在を知りました。これまでの方法で通用しないのはPM視点が足りないせいかもしれない、もっと体系的に勉強してみたい、そう考えて2023年10月にオンライン受講生として入塾しました。

今思えば、多額の資本を入れる全面リニューアルという規模感で仕事をするのであれば、絶対に自社のケイパビリティまで俯瞰してマネジメントすべきです。しかし当時はどこにどうやって調整すればうまく回るのか分からず、非常に苦しい状態でした。「この答えが分かるのでは」と考えたのも入塾理由の一つです。

今ある「建築業」を社会の中で位置づける視座を知った

私は設計・施工などの専門技術を学んでいないので、塾に入ってもついていけるかは少し不安でした。しかし第1回の講義ではもっと大きな総論、世界の中での建築業、日本の中での建築業の位置づけから話が始まります。この経営的な視点は私にとってとても面白く感じられました。

川原先生は毎回、伝えたい情報があふれていて非常に早口でしゃべられるんです。3時間があっという間で、最初は本当に度肝を抜かれます。一度で理解したとはいえないのですが、講座には動画アーカイブがあるので自分のペースで何度も復習できます。話に引き込まれて3時間の再視聴でも苦がなく、いつも「あっ、もう終わった」という感覚でした。

今ある「建築業」を社会の中で位置づける視座を知った

仕事の意味が分かると、視野と興味が広がっていく

講座の中でも印象深いのは、建築における経営学の側面です。発注の前には事業戦略があり、戦略の中で必要な建築物を考えて予算と方向性を見極める。その戦略の前にも段階があって、さかのぼっていくと政府の経済施策や白書などの本当の源流がある。この視点の持ち方で工事発注という仕事の意義が分かり、自分が苦労していたポイントと解決策が見えてきました。

どの不具合について何を解決したいのか、上司や取引先の背景を理解しながら説明する術が身についたのも大きいです。実際の仕事で調整する際は「今のは講義で聞いた話をそのまま言っているな」と思うことが何度かありました。

塾のアフタースクールにも参加し、異なるバックグラウンドを持った受講生の皆さんと交流しています。会社の枠組みを超えてお互いの立場を伝え合い、より良い建築や施工プロセスについて話せる場はとても貴重です。

受講後は視野が広がり、さまざまなことに興味を持てるようになりました。先生の著書には『プラットフォームビジネスの最強法則』(※2)がありますが、まさに東京ドームはエンターテインメントとスポーツのプラットフォームです。現在は施設建築から離れた仕事をしていますが、塾から得た「東京ドームを社会の中にどう位置づけたいのか」という視座は今もとても役立っています。

  • ※1『施設参謀 建設リスクを経営資源に変えるコンサルティング』(ダイヤモンド社)
  • ※2『プラットフォームビジネスの最強法則 すべての産業は統合化される』(光文社)
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