建築マネジメント塾 受講生インタビュー 2025年8月7日実施

完成はゴールじゃない。パイオニアから学ぶ、建てた後の、その先までを見据える建築マネジメント。

株式会社安井建築設計事務所
角田 史さん

図面の世界から、プロジェクト全体を見渡すポジションへ

株式会社安井建築設計事務所 角田 史さん

昔は企業や自治体の中で、建築プロジェクト全体を支える専門人材を抱えているのが当たり前でした。しかし最近は、その役割を外部に委託することが主流になっています。私がいる設計事務所でも、4〜5年前からCMやPMの依頼が少しずつ増えてきました。そうした流れの中で「マネジメントビジネス部」が立ち上がり、設計部からの異動が決まりました。

それまで設計一筋だった私は、正直戸惑いました。設計事務所としては、長年培った信頼と実績を誇る老舗ですが、建築マネジメントは、まだ可能性を探り始めたばかり。「一体どんなことをやればいいんだろう?」と、心もとなさを感じていたのです。そんな折、建築系の雑誌で「建築マネジメント塾」の広告を見つけました。主宰は建築マネジメントのパイオニア・川原秀仁先生。「この人から直接話を聞けたら、新しい仕事のヒントが得られるかもしれない」。そう思った私は、迷わず参加を申し込みました。

そして迎えた初回講義。てっきり建築マネジメントの技術や手法の話が始まるのだろうと思っていたら、川原先生が語り出したのは、「これからの社会がどう変わっていくか」という大きなテーマでした。「あと50年で社会構造は大きく変わるが、その変化は建築業界にとってのチャンス」「だからこそ、この先20年、30年、どんな仕事をしていくのかを考えなければならない」――そんな言葉が次々と投げかけられました。「これは、とんでもなく大事なことを言っているぞ」と思い、思わず背筋が伸びたことを覚えています。

建物が完成した後の、その先まで見据えた提案を

川原先生が息つく間もなく語り続ける3時間の講義は、毎回とても刺激的でした。後半のプログラムでは、具体的な技術や手法についても惜しみなく指南していただきました。そして、講義後の質疑応答タイムでは、自分の経験と照らし合わせながら「何か質問したい」と必死に頭を働かせ、久しぶりに学生時代へ戻ったような、懐かしい気持ちになったことを覚えています。

講義を通して深く心に刻まれたのは、「建物の完成はゴールではない」ということです。どんなに立派な建物が完成しても、「使いにくい」「うまく運営できない」となっては、意味がありません。大切なのは、とことんお客さまの目線に立って考えること。
これからその建物をどう活かし、どんなビジネスを広げていきたいのか。そこまで思いを巡らせながら、未来を見据えた提案をしていかなければならないのです。

講義で学んだことが、私にとってのガイドブックに

設計の現場にいると、予算はもちろん意識するものの、「その金額で本当に運営後に採算が取れるのか」まで踏み込んで考える機会は意外と少ないものです。講義では、まさにその部分を深く考えるよう、何度も問いかけられました。

そして、もし計画がお客さまの利益につながらないと感じたら、「今は建てるべきではありません」とまで提言できる視点と勇気も必要だと、川原先生はおっしゃいました。その判断は、ただ図面や数字を眺めているだけではできません。日々のお客さまとの会話の中でふとこぼれる本音や、何気ない一言の中にヒントがあります。そこから本当に必要なことは何かを見定めて、ときには「建てない」という選択肢も提示する。そうした姿勢が信頼関係を生み、その信頼が最後にはお客さまの利益につながるのだということを学びました。

そして最終的には、こちらから企業や自治体へ働きかけ、「事業や地域にプラスの価値を生み出す施設をつくりましょう」と提案できる存在になるべきだと、川原先生は語りました。その言葉に、「これはまさにビジネスの発想だ」と感じ、視野が一気に広がったようでした。部署を異動したばかりで、方針が定まらなかった私にとって、この講義はまさに“ガイドブック”のような存在となってくれたのです。

講義で学んだことが、私にとってのガイドブックに

建築に関わるすべての人へ

講座を終えたとき、「これからの時代をどう戦っていくべきか」「どんなチャレンジをしようか」と考えて、ワクワクしてきたことが思い出されます。社会の変化が加速する今、これまで通りのやり方で仕事を続けていたら、20年後、30年後、取り残されてしまうかもしれません。けれど、スタッフ全員が発注者や事業者の立場を理解し、柔軟な発想で動けるようになれば、この先何年も選ばれ続ける会社になれるでしょう。

これは設計事務所に限った話ではありません。施工会社、ゼネコン、ビルマネジメント…建物に関わるすべての人に必要な視点だと思います。そして、その視点を得るためのヒントが、この講座には詰まっています。この道を切り拓いたパイオニアによる「生きた教科書」を、まずは一度、体験してみてください。

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