ブルーオーシャンの見つけ方 Blue Ocean

ブルーオーシャンとは、競合相手のない未開拓市場のこと。
社会と経済の潮流はどこに向かうのか。
未来を築くインフラのあり方とは。
サーファーの顔も持つ川原秀仁が、業界業種を超えて縦横無尽に語るインタビュです。

コロナ禍の停滞期を乗り越えた今、注目すべき3つの課題と処方箋

第5回国内インフラ・不動産の再構築① 償還期を迎える建築物をどうするか

今回は3つ目のトピックである「国内インフラ・不動産の再構築」を見てみましょう。最近やっと、高度経済成長期に作られたインフラの償還期についてメディアでも報道されるようになりました。償還期は2015年から2035年くらいまで続くといわれているので、今がちょうど真っ只中です。

古いものを新しくする動きについては、都市の再構築あるいは新たな街づくり、地方創生などと呼ばれますが、これらの建設投資がなされる要因は大まかに分けて以下の4つです。

① 社会・経済の将来可能性に向けて、意図的側面を含めて投資する
将来の期待値に向けての再開発がこれにあたります。製造業が従来のつながりや地域性を断ち切るデカップリングで日本に投資しているのもこの動きの1つです。

② 好調な市場領域・パラダイム変換が起こっている領域に投資する
増大する情報ストレージ対応のデータセンターや富裕層向けのラグジュアリーホテルの建設など、伸びている市場にさらに肩入れしていく動きです。次世代半導体に向けての投資もこの項目に入ります。

③ 必要に迫られて投資せざるを得ない領域に投資する
収益を上げにくい地域でも、インフラの耐用年数を迎えれば建て替えとその費用が必要です。物理的劣化だけでなく、役割が変化して起こった社会的劣化にも対応しなければいけません。日本の大部分の地域が抱えている課題だと思います。

④ ビジネス変革を余儀なくされている領域に投資する
報道関係の業界や金融業界が代表的です。紙の新聞や地上波ニュースは以前ほどの需要がありません。金融も窓口対応よりインターネットバンキングの対応力が求められるようになりました。こういった既存ビジネスからニュービジネスへモデルチェンジしなければいけない領域は投資が必要です。

以上のうち、特に③と④はさまざまな問題を抱えています。

ニュービジネスへのモデルチェンジは、施設改革で乗り越えられる

それでも④の場合は、いくつか施策が考えられます。例えば放送局なら、地上波中心だったビジネスを切り替えて、次世代に向けたコンテンツを発信できるようにします。従来は放送局単体で動かしていた事業を見直し、「もっと人を集める・来場者にお金を落としてもらう」という面に目を向けるのは意味のある改革です。そのためのマーケティングと報道手法などを考え直せば、建て替えた次世代型放送局から新たな収益の柱を生み出せます。

金融機関で考えれば、今まで店舗で行っていたことを全てネット上で完結できるインフラが求められます。このニーズは明らかなので、そのためにインフラをどう構築するか、データセンターとどう連携するかなどの施策を考えれば次世代にも対応できるでしょう。デジタルとリアルを融合させるテクノロジーとビジネスモデルを組み合わせるのがカギです。

しかし、さらなる課題を持っているのが③の領域です。

その地域でいかに“外貨”を獲得するかを考える

③の「投資をせざるを得ない領域」について、大都市であれば収益を得られる可能性が高く、どんどん進化して開発が進みます。東京の丸の内や八重洲などはそうです(それでも極端な建設費高騰が大きな障害になっているのも現実です)。しかし収益の可能性が低い地域の場合、どのように収益をもたらせばよいでしょうか。その地域だけで経済を循環させて完結していければいいのですが、ほとんどの地域はそれが無理でしょう。

収益を得るために考えるべきは「いかに“外貨”を獲得するか」です。ここでいう“外貨”とは海外の国の通貨ではなく、自分の地域外から持ち込んだり使われたりするお金という意味合いです。自地域の住民や利用者だけで収益を得られないのであれば、観光・産業・プラットフォーム・金融などで外部の人々や資本を誘致するしかありません。

そしてこの“外貨”獲得の手法は、地域ごとに異なるものです。それぞれ状況や使えるリソースが違うため、対応させる戦略も変えていく必要があります。私が考えているのは「大都市・中核都市」と「地方都市」という分け方です。

「地方都市」の“外貨”は「統合」によって得る

これまでの例を見ると、「大都市・中核都市」のほうが大規模な再開発へ向かう傾向があります。収益源をある程度見込めて、新たなビジネスコンテンツを生みやすい土壌があるからです。スポーツ観戦だけに留まらないボールパークを建設するなど、スポーツビジネスの変革はその一例です。

「地方都市」におけるキーワードは「統合」です。どの地域も人口流出や少子高齢化に悩み、少ない住民で課題解決が求められるため「大都市・中核都市」のような大規模開発は困難です。今バラバラと散在している施設や人を「統合」したほうが効率よくリソースを活用できます。

次回はこの「地方都市」が対応できる施策について、さらに詳しく解説します。

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