ブルーオーシャンの見つけ方 Blue Ocean

ブルーオーシャンとは、競合相手のない未開拓市場のこと。
社会と経済の潮流はどこに向かうのか。
未来を築くインフラのあり方とは。
サーファーの顔も持つ川原秀仁が、業界業種を超えて縦横無尽に語るインタビュです。

加速する建設業界の進化と、これからの社会構造を把握する

第2回インフラ大変革② 電力と直結するハード構想とビジネス

進化する情報通信インフラにともなって、これまでにない規模で電力供給が求められる未来が見えてきました。では、この電力はどのように賄えばよいのでしょうか。

「ハードに併設する電力施設」という新発想

今の電力はまず発電所で発電し、送電線を通じて変電所へ届けられ、その先の個々の需要先へ配られています。しかし「AIデータセンター」のような大規模データセンターが設置されると、必要なだけ供給するという方法は困難です。なぜならそのデータセンター1カ所で発電所クラスの電力を使用すると分かっているからです。

そこで研究されているのが、データセンターというハードに「電力施設を併設する」という構想です。社会へ供給する発電所には頼らず、自前で発電設備を設置し、その電力でデータセンターを稼働させるのです。ただし再生エネルギーのような発電力では不足です。それに対して従来から活用してきた化石燃料は強力な発電源なのですが、環境を考慮するとふんだんに使うわけにはいきません。

この流れで注目されているのがフュージョンエネルギー、核融合反応です。核融合とは「水素のような軽い原子核どうしがくっついて(融合して)、ヘリウムなどのより重い原子核に変わること」で、核融合燃料1gあたり石油約8tに相当するエネルギーが生まれます(注1)。実用化されるのは2050年代といわれていましたが、開発が加速したおかげで2030年代の実現が視野に入ってきました。また、原子力よりも安全な小型原子力発電ユニット(スモールモジュールリアクター)も新たな発電源になると期待されています。

「ハードに併設する電力施設」という新発想

施設での省エネ技術は進化している

データセンター自体でも省エネ技術が進んでいます。例えばデータセンターのエネルギー効率を測る指数にPUEというものがあります。設備全体の消費電力をIT機器の消費電力で割った数値で、1.0に近づくほど「省エネ化を実現できている/データセンターとして性能が良い」と判断します。

さまざまな機器に対してこの数字を達成できるよう工夫がなされてきました。影響が大きなものとしてはサーバーの室温対応が挙げられます。これまでは稼働中18〜20℃を維持しなければいけなかったものが、現在は27℃でも対応できるサーバーが出てきました。冷却が軽減できるサーバーが主流になれば空調システムへの負荷が減り、使用電力も大幅に減らせます。

情報通信インフラからの省エネ化も進む

一方、情報通信インフラ側からの省エネ化も研究が進んでいます。NTTと経産省が主導するオールフォトニクスネットワーク、いわゆるIOWNは2030年以降の通信方法の主流になろうとしています。今よりも大量の情報を扱える技術を取り入れつつ、同時に少ない電力使用量で済むように改良し、来たる大規模情報トラフィック量にも対応できる環境を整えています。

発電施設を備えたデータセンター、それをつなぐ低消費電力・大容量・低遅延のオールフォトニクスネットワークが実現できれば、日本の津々浦々でデータセンター建設とネットワーク化が進み、私たちの働き方や考え方、生活そのものも変わります。そのためには日本の企業に頑張ってもらわなければいけません。

データセンター事業者からクラウド事業者へ移行できるか

現在、日本にはいくつかデータセンター(DC)事業者が存在します。NTTデータグループ、ソフトバンク、KDDI、さくらインターネットがその代表です。DC事業者は建設会社にデータセンター建設を発注し、設備を整えてクラウド事業者へ施設をレンタルします。クラウド事業者がサービスを提供する先は、IT企業のほか、行政機関、金融機関、その他民間企業などがあります。ただ、仲介するクラウド事業者には、まだ国内企業が進出できていません。

クラウド事業者で代表的な企業を挙げると、AWS、Microsoft、Google、セールスフォース、オラクル、IBM、テンセントなどがあるでしょう。彼らは日本におけるクラウド事業を進めて確かに成功しました。しかし私は日本企業にもまだ挽回のチャンスがあると考えます。一気に世界向けのサービスを作るのは難しいかも知れませんが、国内需要なら十分に供給できると思うのです。

これまで述べてきたように、日本でもデータセンター需要が伸び、実際に建設・オープンしています。IOWNや小型原子力発電ユニットが実用化すればさらに需要が増えます。「ハイパースケールデータセンター」や「AIデータセンター」のように大規模なもののほか、必ず小規模の「リージョンエッジデータセンター」「ローカルデータセンター」も増やさなければ強固なネットワークにはなりません。日本企業の皆さんには、DC事業だけでなくぜひクラウド事業にも進出してもらいたいと思います。

注1)量子科学技術研究開発機構 https://www.qst.go.jp/site/jt60/4935.html

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