建築マネジメント塾 受講生インタビュー 2025年9月18日実施
“建てられない時代”を打開する新たな視点。私たちが果たすべき役割が見えた
倉沢建設株式会社
代表取締役 社長 倉沢 延寿さん
「建てたら終わり」から「使う人に寄り添う建築」へ

埼玉県川越市で、地域に根ざした建設会社を営んでいます。主に手がけているのは、地元企業の工場や倉庫、事務所などの、いわゆるファシリティ関連の建築です。
建築業界では、建物の設計や施工が一段落した「その後」に、目が向けられる機会は少なく、完成後の運用や維持管理は、どうしても後回しにされがちです。そんな業界の常識に、私はずっと違和感を抱いてきました。
そんな中で出会ったのが、「ファシリティマネジメント(FM)」という考え方です。建物を長く、安全に使い続けることを目指すこの発想は、私に“使う人へ寄り添う建築”という向き合い方を教えてくれました。
もう一つ、新しい気づきを与えてくれたのが「チェーンストア理論」です。大手ファミリーレストランなどが、多店舗展開を効率化するために導入しているこの手法には、レイアウトや設備を標準化し、業務効率を高めるという考え方があります。
私はこの発想を、自分たちの施設設計や施工にも応用できるのではないかと考えました。そこでFM業務と組み合わせ、自分なりに整理・再構築した成果を「ファシリティマネジメント大賞」に応募したところ、幸運にも2024年に奨励賞をいただくことができました。
「さて、この学びをどうやってお客様に還元していこうか」。そんなふうに考えていたある日、SNSで偶然目にしたのが、川原さんの『建築マネジメント塾』の募集広告でした。
企画段階から関わることで、次の可能性がひらく
「これはきっと、今の自分に必要な講座だ」。そう感じた私は、迷わず受講を決めました。その直感は、やはり正しかったと実感しています。というのも、川原さんから得た学びや気づきの一つひとつが、抱えていた疑問に明確な答えを与えてくれものばかりだったからです。中でも特に印象に残っているのが、建築の“前段階”である「企画」についての教えでした。
私たちは、どうしても建築や施工の段階から関わることが多いのですが、依頼されるお客様は、その前に事業計画や経営戦略を描いており、それが建物の在り方を大きく左右しています。私たち建設のプロは、そうした上流の段階から寄り添うべきだという考えには、大きな共感を覚えました。
さらに、その段階できちんと価値を提供できれば、収益化も十分に可能だということも教えられました。これまで当社は、施工を主な収益源とし、企画や設計はサービスの一環と捉えてきました。けれども、「企画や設計もビジネスになる」という発想に触れ、目から鱗が落ちる思いでした。
受講後のアフタースクール(OB会)も大きな助けになっています。仲間と学びを振り返る時間は、自社の事業に活かすためのヒントを与えてくれました。
「止まったプロジェクト」に出会ったときが、腕の見せどころ
現在、土地価格や建設コストの高騰によって、建設プロジェクトを断念せざるを得ないお客様が増えています。しかし、事業そのものまで諦める必要はありません。大切なのは、建物の計画を見直し、実現の道を一緒に探していくこと。私は、それこそが建設会社に求められる姿勢だと思います。
建物の「良さ」は、価格や高級感だけで決まるものではないのです。ワインに特別な日の一本と、日常の一本があるように、建築の品質も、お客様の目的や用途によって変わります。重要なのは、用途に合った“適正な品質の建物”をつくること。その実現には、高度な専門性とマネジメント力が欠かせません。
そんな視点をいただいて以来、「もう建てるのは諦めました」という言葉を聞くと、むしろワクワクするようになりました。止まっていた計画を再び動かし、お客様に希望を取り戻していただく。そんな新しいやりがいが生まれたのです。

建築の未来を切り開く、2040年に向けた挑戦
今、2040年をひとつの節目としたビジョンがあります。それは、「建築マネジメント」を専門に担うチームを社内につくることです。そこに向けて、私自身はプレーヤーとして実務を重ね、その経験をマニュアルとして整理し、次世代に継承する役割を担っていきます。
川原先生の講座は、そんな目標の土台となる知識を体系的に学べる貴重な場でした。正直、建築系の大学で必修にすべきだと感じるほどの内容だと思います。将来チームに加わる仲間にも、ぜひ受講してもらいたいですね。
今後さらに建設コストが高騰すれば、「建てたいのに建てられない」時代が本格的に訪れるかもしれません。そんな時代だからこそ、私たち中小の建設会社には、建築マネジメントの視点を持ち、お客様の事業に寄り添った提案をしていくことがますます重要になってくるでしょう。そしてそれこそが、建築業界の新たな未来を切り開いていく力になるはずです。
