ブルーオーシャンの見つけ方 Blue Ocean

ブルーオーシャンとは、競合相手のない未開拓市場のこと。
社会と経済の潮流はどこに向かうのか。
未来を築くインフラのあり方とは。
サーファーの顔も持つ川原秀仁が、業界業種を超えて縦横無尽に語るインタビュです。

オープン・ソースの活用法、ビジネスで使える「先読み力」のつけ方

第6回どうする? BIMによる建築確認申請、新しいビジネスへのつなげ方

一般に公開されている情報から状況分析をするOSINT。これまでは内閣府「対日直接投資促進戦略」、観光庁「観光立国推進基本計画」を題材に情報を読み取り、私たちの新しいビジネスにどうつなげるかを考えてきました。今回は建設業界にとって非常に大きなトピックである、国交省のBIM/CIM関連施策を取り上げてみたいと思います。

すでに、2023年4月以降に入札契約手続きを行う「直轄土木業務・工事」において、「BIM/CIM適用原則義務化」が適用されています。建設事業で取り扱う情報をデジタル化し、受発注者のデータ活用・共有を容易にして効率化を図る施策で、3次元モデルを活用した設計図書の作成、発注者によるデータ共有などが求められています。

技術調査:BIM/CIM関連基準要領等(令和5年3月) - 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_fr_000115.html

さらにその先で予定されているのが「BIMによる建築確認申請」の実施です。中小企業も含めたBIMソフト実装、BIM図面審査の開始などがロードマップに策定され、2025年開始が目標とされています。

建築:建築BIM推進会議 - 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/kenchikuBIMsuishinkaigi.html

現在でも設計図書や竣工図書のデジタル化すら実施できていない企業が多い中、果たしてこの施策がどこまで進むかは未知数です。しかし「こんなことが起こっている」「これから起こりそうだ」という情報はビジネスを創る大きなヒントです。急激な実施が進めば困る企業・分野が必ず出てきます。そこで私たちは何ができるかを考えるのです。

課題①:まだまだ非連携の建設サプライ・チェーン

建設プロジェクトには、事業や施設戦略策定、企画、基本設計、実施設計、生産・施工、事業運営などの各フェーズが存在します。一昔前に比べればそれぞれの工程に専用ソフトやシステムが導入され、作業効率はずいぶん上がりました。ただ問題なのは、それぞれの工程がシステム的に連携していない点です。

営業チームが戦略や基本計画を立てる営業系システムはありますが、設計者が使う設計システムとは連動していません。この設計システムがあっても、後工程の生産・施工システムとは非連携です。設計および施工時に業務が重なるはずの積算・見積システムも他システムとは別に存在し、お互いのデータが生かされていません。確認申請でBIM化を進めるなら、数々のシステムがうまく連携できる流れを構築すべきでしょう。ここに1つ大きなビジネスモデルのタネがあります。

課題②:現在の主要CADソフトとBIMフォーマットの連携

また、現在はBIMフォーマットにも2つの潮流があります。1つはAutodesk社によるRevitが構築する世界、もう1つはRevit以外のさまざまな独自系システムが混在している世界です。それぞれで建築系と設備系をつなぐインターフェースがありますが、一長一短です。

まだ不便である、まだビジネスを停滞させる要素が残っている、ということは、そこが新たなビジネスを生み出す土壌になり得ます。独自系フォーマット内で使い勝手のよいアプリや生成AIを組み合わせ、ユーザーにとって利便性が高いシステムを構築すれば、2025年以降も社会に貢献するビジネスとして成長できるでしょう。

あらゆる「世界」と「階層」を結びつける者が求められている

これまでOSINTの手法を中心に社会の動きを考えましたが、何年も前から変わらないのは「異なる世界・階層を結びつけること」が強いニーズとして常に存在し続けていることです。

「対日直接投資促進戦略」では、IOWN構想のような最新技術と地域、人、そしてお金を結びつけるのが最大の目的です。「観光立国推進基本計画」でも、訪日外国人の関心、お金、交流が日本の魅力ある地域や人とつながり、発展していくことを目的としています。「BIMによる建築確認申請」は、現在ある建設データと各属性要素をIT・DXなどのテクノロジーでシームレスにつながないと実現できません。

そして建設業界は、どの分野にも働きかけて新たなビジネスモデルを構築できる立場にいます。建物というハードは包含する領域が広大で、建物には「人と人/人とモノ/モノとモノ」をつなぐ技術を導入でき、最先端技術の応用にも柔軟に対応できます。

半導体工場や宿泊施設など施設自体の機能を高めるほか、これからビジネスをしたい人たちが動きやすいシステムを構築することも可能であり、人と人が出会う場所を提供することもできます。建設にできることはたくさんあります。

暗いニュースばかりが飛び交いますが、私は今後も日本は世界と対抗できると考えています。眠っている能力や性能を上手に連携させれば、日本という国にはまだ発展できる可能性が十分にあります。今はせっかく存在する膨大な要素を結びつける働きかけが少ないだけなのです。

私が新会社を立ち上げて活動を始めたのも、自分でその後押しをしたい、後押しできる人財を育てたいという思いからでした。今回の連載では考えの一部しかお話しができませんでしたが、もし詳しく聞きたい方がいらっしゃいましたらぜひお声がけください。セミナーなどでは課題の見つけ方のほか、解決の具体的な方法も伝えています。講演などでも細かい内容を紹介できます。

もちろん、この連載から「やってみよう」と行動につなげていただけたら、これほど嬉しいことはありません。これからもこのコラムを通じて皆さんにビジネスの新しいタネを提供できればと思います。

PAGE TOP